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セッション
植物から但馬を見てみると  菅村 定昌 氏
1.植物から但馬を見てみると
2.日本の生物多様性を支えるもの
3.但馬の植物
4.かつてない危機にさらされる植物
5.私たちにできること
4.  かつてない危機にさらされる植物

今、植物は危機にさらされています。昔から、開発などで生育地が失われたり、人が園芸用に採ってなくなってしまうことはありました。今、大きな要因の1つとなっているのが、オオブタクサ、アレチウリなどの外来種です。外来種によってその土地固有の植物が駆逐されてしまうのです。シナダレスズメガヤという外来種がありますが、この植物によって石の河原に生える植物がすべて姿を消してしまった場所が何カ所もあります。里山ではモウソウチクが広がっています。また、外来種ではありませんが、国内移入種といって本来そこにはないはずの国内の植物がはびこることもあります。

これは但馬で今花盛りのオオキンケイギクです。本来は駆除すべきなのですが、きれいな花なので、草刈りの時にこれだけが善意で刈り残されることも多く、爆発的に増えています。しかし、駆除するといっても簡単ではありません。特に害の多い外来種は、特定外来生物に指定されていますが、不注意に刈り取ったりすると逆に法律違反になったりもします。但馬にはオオキンケイギク、オハンゴンソウ、オオフサモ、アレチウリなどがありますが、熟した種子がついていたりするものを移動したり、庭に植えたりすると罰金100万円または懲役1年以下の罰則が科される可能性があります。特定外来生物の場合、種子を落とさないようにゴミ袋に入れて燃えるゴミに出すのが正解です。

最近ではシカの被害も顕著です。これらの要因の複合によって、かなりの種類の植物が絶滅していっています。

シカが自然を食べつくす

最後にシカの問題に触れておきましょう。シカが自然を食べつくしています。当たり前だった景色が変わってしまっています。何気ない場所の写真を撮っておいて、何年か経ってから見てみてください。驚くほど変わっています。希少植物が減っているというのではなく非常に多くの種類の植物が食べられて激減しています。一時はシカの不嗜好植物が増えていましたが、最近はそれらも食べられるようになってきました。植生が失われて土がむき出しになって丸裸になっている場所が増えてきています。

植物が減ると、それを食べていた昆虫が減ります。ウスイロヒョウモンモドキという非常に稀少な蝶が鉢伏高原に生息しています。この幼虫はオミナエシの葉を食べます。成虫はいろんな花の蜜を吸います。シカが植物を食べて幼虫も成虫もエサを失いました。オミナエシを植えたり植生保護柵を作るなどの懸命の保護策が取られていますが激減し、絶滅の危機にさらされています。燈火に飛来する蛾も激減しました。草本だけでなく低木もシカに食べられて減っているので藪がなくなり、巣をかける場所を失ったり、エサを失ったりして鳥も減っています。ゼンマイ、コゴミ、トチの実なども食べられています。すぐにも人間の、山菜を採る楽しみ、山を利用する文化も失われてしまうでしょう。

自分たちでシカの食害から自然を守ろうと立ち上がった人たちもあります。神鍋では、1時間の自主的な調査で、100頭のシカが目撃され、行政と住民が一緒に植生保護柵を設置しました。ノアの方舟大作戦といって、希少な植物の周辺を囲う豊岡市の事業も一定の成果を上げています。グループでワナの狩猟免許を取る人々も出始めましたが、メンバーの高齢化が激しいです。若い人はこれだけでは食べていけないので続けることができずに辞めていくのです。

シカは一定数捕獲しなければなりません。狩猟免許を取るには、講習会の受講に1万円、受験の申請手数料が5200円必要ですが、これだけです。皆さん、取りましょう。

兵庫県も頑張っています。年間3万頭だった捕獲目標を4万5千頭にしています。このうち豊岡は約7千頭です。しかし貴重な植物が多い奥山ほど、捕獲が難しいのでハンターもなかなか入りません。兵庫のシカは年に20%ずつ増えており、5年で倍のペースです。豊岡は専門家や専任班を置いて6800頭取りましたがそれでも減りません。

シカはエサがあるところに移動していきます。市や県の境はシカには関係ありません。香美町や新温泉にも被害が拡大していっていますが、鉄砲の撃てる人は一桁しかいません。

豊岡では、個体数の増加で子ジカの生まれる時期が遅くなっていたという話があります。中途半端に狩猟をするとかえって適度に間引きすることになり個体群を健全化することになるかもしれません。駆除は、難しい問題を含んでいます。

さきほど、園芸愛好家による採取によって起きる稀少植物の危機の話をしましたが、逆に確かな栽培技術を持っている園芸家は貴重なサポーターになってくれる可能性があります。里親制度のように預けて保護してもらうのもよいかもしれません。

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