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ニッポンの里山  小野 泰洋 氏
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これらの里山のチカラを今流行の言葉に当てはめてみると、里山の中に未来があることがわかります。

 ① 美しいニッポンの原風景 → 田園回帰
 ② 共生の知恵       → エコロジー
 ③ モザイク状の生態系模様 → 生物多様性
 ④ ホンモノが生まれる   → スローフード
 ⑤ 日本人の自然観を育む  → ロハス
 ⑥ 国土保全の手助け    → 国土強靭化

「確かな未来は懐かしい風景の中にある」…豊岡でもお馴染みの柳生博さんの言葉です。皆さん、里山に囲まれて暮らしておられますが、すごい財産です。価値があります。豊岡の《コウノトリ「も」棲める環境づくり》、《コウノトリ育む農法》、《環境経済戦略》は、いつも紹介しています。豊岡のすごいところは、「合意」を作って「参加」して「経済」もよくしているところ。自分なりにコウノトリを利用しているんですね。

静岡県三島市の市街地を流れる源兵衛川では、住民、行政、企業のパートナーシップでグランドワークという取り組みが行われています。市民ひとりひとりがゴミ拾いなどで参加し、川に触れ、楽しんできたことで、今では歩くのが気持ち良い、ホタルの飛び交う川になっています。町の中を流れる川でホタルを静かに見るという新しい文化も生まれました。実は近くには柿田川という湧き水で有名な川も流れているのですが、天然記念物になって入れなくなり、川と人との関わりが断たれてしまいました。川にはどんどん入っていけばいいと思います。

「里山」というと古臭いイメージがありますが、「里山田園都市」と呼ぶと範囲が広がって未来的な風景になります。豊岡はまさに里山田園都市にふさわしいまちです。こんなふうに、里山の未来を考えていく上で「里山田園○○○」と名付けるのはなかなかよいのではないかと思います。

ただし、「原風景」を思うには「原体験」が必要です。できるだけ小さいうちに、子供のころから「里山は良いところ」と原体験を刷り込んでいく必要があります。それには、「学ぶ」より「感じる」ことだと思います。人間、生まれてきたときは本来、動いているものに興味を示します。そういう感受性を持っているのですが、親が「汚い」と言うと、そのように感じていきます。『センス・オブ・ワンダー』にもあるように、感じることは学ぶことよりも数倍身につくのです。

自然体験の豊富なこどもは、

 ・体力や運動能力が高く、健康
 ・環境問題への関心が高い
 ・道徳心や自立心が高い
 ・好奇心旺盛で自己主張できる
 ・集中力、学習意欲、学習能力が高い

という研究結果もあります。こういったことも理解したうえで是非実践していただきたいと思います。

豊岡を楽しみましょう。里山田園都市に住む幸せを感じられるよう、いろいろ工夫してみましょう。どこでもカフェを開いたり、石や空気になる(気配を消す)練習をしたり。リラックスして気配を消すと、生きものの気配がわかるようになります。

アーサー・ビナードは「里山は作られに行くところ」と言っています。日本人は里山に育てられてきました。里山がダメになると日本人もダメになります。里山の見方が少しでも変わればと思います。

(会場感想)

里山に守られて暮らしていると思ってきましたが、今、里山が逆襲をかけていると感じています。人に見捨てられた里山が復讐しているようで、バランスを崩した里山に愕然としています。鹿の害のため、小さいころから見てきた山がまったく見られなくなっています。今日は美しい話を聞かせていただきましたが、そういう現実もあることを皆さんと共有しておきたいです。

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