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和食の成り立ちと特徴  谷 晃 氏
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茶料理

一方で16世紀のはじめには茶の湯が盛んになります。天文2年(1533年)に最古の茶会記が残っており、ここでうどんのような麺類が出たという記録があります。多くの茶会記に料理のことが記録されているので、これを取り出すと日本料理の発展過程がわかります。茶料理のことを懐石料理と呼びますが、この語句はわりと新しい書き方です。これが一般的になるのは江戸時代末期です。寺社の門前でごく簡単な食べものを出す茶屋のようなものが出現し、その後きちんとした店を構えて一般に会席料理を出す料理屋が現れてきました。

茶料理は17世紀のはじめ(利休の死後)にある程度の完成を見ましたが、現在のそれとはかなり違っています。現在のような形式になったのは、20世紀後半、家元の組織が大きくなってからです。それまではかなり自由な形式で楽しんでいましたが、現在はなかなか楽しめないものになっています。特に初めての人にとっては決まりごとがいっぱいでとても味わうどころではないでしょう。現在の茶の湯の懐石は大変敷居の高いものになっています。

料亭や旅館などで出される料理も値段が高く、毎日は食べられません。和食がユネスコの遺産に認定されて脚光を浴びていますが、それは料亭や旅館などの料理が基本となっており、家庭で食べられる料理とはいえません。少しいびつではないかと感じています。

郷土料理

郷土料理も立派な料理です。郷土料理はその土地の独特な料理で、その場所で採れる素材を使って地元独特の味付けや調理法で食べるのが特色です。少々荒っぽいものもありますが、それも含めて立派な日本料理と捉える必要があると思います。

家庭料理

家庭料理も同じく立派な日本料理ではありますが、現在は危機的な状況にあるといえます。スーパーに行くと年中同じようなものが手に入り、季節感が失われています。出汁をとるなどの手間をかけることや調理の手間そのものが敬遠される傾向にあります。魚がさばけず、出刃包丁や刺身包丁がなく万能包丁しかない家も多いようです。それでも料理をしていればまだましで、食べに行く、取り寄せる、買ってくることで済ませることも多くなっています。ひと手間、ふた手間かけることでその家の料理がおふくろの味として受け継がれていくのですが、季節の素材を使い、その家の味を守りつつ、お金をかけずに手間ひまをかけて料理することがないがしろ、なおざりにされている傾向があります。

美味しいものは外でしか食べられないと思っている人もおられます。若い人の中には日本料理がこんなに美味しいことを知らない人もいる。とびきりの材料を厳選しなくても、手間をかけて自分なりの工夫をすればできるのです。和食は家庭料理が基本にあるべきです。そして、奥さんだけでなく、男も、老若男女すべてが料理をして、許されるなかでできるだけ美味しいものを食べる。みんなで美味しいものを食べて和気あいあい、気分がなごみ、家庭の絆が深まるのです。家庭料理が大事と言うことを訴えたいです。

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