セッション
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イマドキの野生動物
宮崎 学 氏(自然界の報道写真家)
5. 今も昔も人は生き物と同じエリアに暮らしている
ところで、みなさん、クマに会われたことありますか、但馬にはいますよね。僕の住んでいる長野にもいます。が、誰も自分の暮らしている同じエリアで、自分が歩いている同じ道をクマが歩いているなんて思っていないでしょう。 僕は、人間の歩く道に2年間カメラを据え付けて撮影しました。そこでどんなものが歩いているのかを撮影したんです。はい、これは野良ネコですね。これはタヌキ。そしてこれはおねえさんです、ジョギングしてますね。次、これはテン。そしてサル。ボーイスカウトの少年たちも元気に歩いています。そして、はい、これはクマの親子ですねえ。立派なお母さんです。これはまた別のクマの親子です。この3頭のクマには、何度となくカメラを殴られましてね、彼らはレンズの方向を固定したアングルからゆがめちゃうもんだから、全く空を映していることがあって困りました。 僕は今、犬を飼っています。縄文犬です。縄文犬の頭蓋骨はニホンオオカミそっくり。とにかく主人思いで、飼い主とあうんの呼吸で一緒に行動できる。呼べばすぐに飛んでくる。 人はずっと長い間、犬を非常に大事にしてきました。集落で犬を飼っていたんです。50年ほど前までは、犬はつながれてなどいなかった。放し飼いにされていました。で、集落に生きものが近づいてきたら、いっせいに吠えたんです。昔は今のように機密性の高い住宅ではなかった。家の中にいても外の音は筒抜けに聞こえていましたし、犬はクマが来たことを察知して、ワンワン!と吠えて知らせることができた。生き物は人間には感知できない超音波を出していますから、大きなクマがやってくると犬は分かったんです。5・6匹の犬が寄ってたかって吠えればものすごい迫力ですからね、クマも逃げていきます。さすがのクマも「クマった、クマった・・」と退散しますよ(笑)。 余談ですが、僕の飼っていた縄文犬は本当に賢くて、自分の命の終わることを悟ると、さっと家族から離れていなくなった。今は犬の放し飼いは禁止でしょ。人につながれて、病気になったと言えば医者に連れて行かれる。獣医だけをよろこばせるだけ。「介護犬」なんて、かわいそうです。 |