セッション
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競争しない競争戦略 渡辺 良機 氏
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今夜は自分がやってきたことの一端をお話しようと思います。豊岡には縁もゆかりもありませんでしたが、神美台の中核工業団地に20年かけて伊丹から少しずつ工場を移してきました。昨年一年間で560名の方が見学に来られましたが、その多くは、これから先どうなるのか漠然とした不安を持っておられる中小企業の社長さんです。その方たちに私は、「安売りで本物の顧客満足は得られない」というお話をします。
当社は昭和9年創業、19年に株式会社になりました。創業以来大阪です。先代(創業者)が生まれ育った地方の名前を社名にされました。先代には3人の娘さんがおられましたが娘婿さん全員に会社を継ぐことを断られ、遠い親戚だった私が目を付けられました。手作りの現場なので職人を束ねるのが仕事です。後継者前提での入社をと4年間口説かれ続けて渋々引き受けたのが昭和48年。1に赤字決算がない、2にエネルギー、製鋼、造船など重厚長大の名だたる大企業が顧客、3に良い作り手を揃えているというのが口説き文句でした。
コストダウンできないもう1つの理由は職人の手作りであることです。マンツーマンのOJTで3~5年鍛えてやっと一人前です。手作りバネの看板を上げている以上、いくら不景気でも人件費を削るわけにいきません。人件費は「やっかいな固定費」ではなく「投資」と思うことにしています。 → 次のページ
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