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競争しない競争戦略  渡辺 良機 氏
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2代目として何をどのように一生懸命するか。33年間を振り返ると、一番は「社員のため」。経営の利益だとか株主への貢献だとかはではなく、最終目的は社員を幸せにすることだと思っています。いろいろな提案が出されますが判断基準はすべて「社員のためになるかどうか」です。

1993年に豊岡の神美台に1万坪の工場用地を取得しました。伊丹の工場は区画整理のため移転が必要と言われていましたので、ずいぶん時間をかけて検討し、アクセスの良いところをいくつか見て回りましたが、条件の良いところは大企業が来て根こそぎ人を集めていきます。豊岡なら良い人材が来てくれると思いました。2001年に最初の工場を建設し、2013年に最終移転しました。安く、早く作るための装置は置いていません。作業者を楽にする装置などを集めています。いつでも見学に来ていただいてけっこうです。

良い会社になることが豊岡へのご恩返しと思っています。社員は現在約60名。平均年齢は35歳で半分が独身です。結婚してこの地に根を張って生きていってもらうお手伝いがしたいとの思いから100万円の結婚祝い金を出しています。ただし3年以内に離婚したら返してもらいます。4人目の子どもが生まれたときにも100万円です。

経営の話になりますが、何をやって何をやらないかを選択し、戦略的ポジションを明らかにすることが大事です。標準品の市場は、国内だけでなく国際的にも競争が激化する猛烈なレッドオーシャンです。これに対して、ときどき要るだけのオーダーメイド市場は言い値で買っていただける領域です。数が少ないこと、作り手を要請する必要があることから大手にはできないため、結果的にブルーオーシャンになっています。

当社の場合、注文を受けて現場にできるかどうか尋ねても「やってみないとわからない」という返事が返ってきます。やる前に計算の成り立つものが1件もない。リスクを取っています。大手はリスクを取りません。しかし、いったいどちらの方がリスクなのでしょう。標準品は途上国にすべて持っていかれるのではありませんか。大切なのはモチベーションです。生産技術は真似できてもモチベーションは真似できませんから。

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