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セッション
発掘だけが考古学じゃあないんですよ!  潮崎 誠 氏
1.主催者あいさつ
2.遺跡の上に生まれ落ちた宿命の「眼」
3.私の職場
4.考古学の眼で見る縄文土器の美しさ
5.古代の「地場産業」に見るものづくりの精神
6.考古学の眼で「出石焼」の過去と現在をつなぐ
6.  考古学の眼で「出石焼」の過去と現在をつなぐ

さて、時代は一気に大正・昭和になります。この写真の焼き物はなんだとおもわれますか? 徳利? 一輪挿し? 出石の某民家の解体工事の際、屋根裏から見つかったものです。徳利にしてはまず酒を注ぎにくい、お燗もしにくい、そしてなによりお酒がどばっと出てしまって大変。てことで、いまだに用途はよく分かっていません。

しかし、形状が非常に独特であること以上に注目しているのは、絵付けの勢いです。筆さばきが実にすばらしい。見てください、なかなかこれは描けませんよ。で、実はこの焼き物、仕上げの本焼きがなされておらず、素焼きをして呉須で絵付けをした段階でストップされたままの状態で見つかっているのです。それで、私は、せっかく見つけたんだから、本焼きしてもらっちゃおう!と思いまして、知り合いの陶工に持ち込んでみました。京都府舞鶴でご夫婦で焼き物をされている二人に「割れてもいいから本焼きしてよ」って持っていったのです。4月に窯入れされるそうです。ご主人は石川県九谷で絵の修業をなさったこともある、若いご夫婦です。また、もう一つは姫路の知り合いにも持っていきました。

この写真、ご覧ください。白磁、出石焼ですね。細工という意味で極めてマニアックな手法がとられています。何がデザインされているか分かりますか? へちまです。中央のへちまは、皮がむけて中が見えている。その様子をこのような手法で表現するとは。天才ですね。これはもう本当に天才です。

また、こちらの花瓶。素敵ですねえ。花瓶のまわりにいろんな昆虫がついています。虫花瓶です。普通、1300度の高温で焼いたらこのバッタの触覚など溶けちゃうはずなのに、どうやったらこんな焼き物ができるのか。今も出石にある上田製陶所で、大正時代に作成されたもので、作者も分かっています。天才・椋尾喜三郎(ムコウキザブロウ)です。この虫花瓶は、豊岡市の新庁舎完成を記念して、市長室に寄贈されています。

明治から大正時代、出石焼は大量に海外に輸出されていました。「大日本 長稲山造」というサインが書かれた陶器が大量にあります。「大日本」という文字がそのことを示しています。このように、いかにもヨーッロッパ好みの絵付け・色づけされた大ぶりの壺などが、出石で作られています。この鳥の絵など、実にすばらしい。曲面にこれだけの絵、なかなかできるものじゃないですよ。

最後に、これはみなさん何だと思われますか? ある窯元で「不良在庫」として大量に残っているものです。灯台、ですね。神棚に燈明をするための神具ですが、それがつかわれずに残っている。これをなんとか、現代の新しい発想で活用できないか。それで知り合いに頼んで「ちょっと何かで使ってみてよ」と渡してみました。そうすると、出石のお蕎麦屋さんでは、入り口のディスプレイにろうそくや季節のお花と共に飾ってくださった。また、もっぱら私はこんなふうにして、上に染付の小鉢を置いて刺身をもりつけ、下にわさびと醤油、なんて使い方もできるかなあと、楽しんでいたりします。

というあたりで、そろそろ時間がきましたので、終わりにいたします。

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