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セッション
の~らから見えてくるもの  木村 尚子 氏
1.主催者あいさつ
2.今の活動に至るまで
3.「NPO法人ダーナ」から「の~ら」へ
4.「の~ら」から見えてきたもの(社会のこと)
5.「の~ら」から見えてきたもの(自分たちにできる小さなこと)
6.「の~ら」から見えてきたもの(みんな「人」で困っている)
6.  「の~ら」から見えてきたもの(みんな「人」で困っている)

の~らから見えてきたもの、最後にお伝えしたいのは、ああ、みんな「人」で困ってるんやなあということです。学校でも、家庭でも、職場でも、地域でも。本人も、それを支える周囲の人たちも。困っている。

そんな人たちが、どこかでの~らのことを聞いて、視察にやって来られます。会社の経営者さんなんかも、部下をどう扱ったらいいのか分からなくて困っておられたり。

私が思うのは、困っている人をなんとかしようとか、その人のためにとか考えるのではなくて、それをすると結局は自分のプラスになると考えればいいと思うんですよね。たとえば、指示が理解できなくて困っている人に腹を立てたり叱ったりするのではなく、わかるように説明できる自分になれば、結局自分が得をするわけです。その人は自分のコミュニケーションスキルを上げてくれる練習相手ということで。まあ、そんな具合にその状況を楽しんで工夫できるといいですよね。の~らに居るとそういうことを日々意識しないといけないので、とても勉強になります(笑)。視察に来られた方は、ゆるゆると、なんかうまくやってる様子をみて、びっくりして帰られるようです。

「なんで、でけへんねん!」と怒ると自分でも嫌になりますよね。怒らなくなると、まず自分が救われるんです。人に対して怒っている自分って、とてもしんどいじゃないですか。他人に厳しくしていると、自分に返ってきますしね。なんでもそうなんですけど、ほどほどにせなあかんのちゃうんかなあって、思うんです。ほどほどにね。

中田:いやあ、木村さん、素晴らしいお話でした。みなさん、どうでしたか。木村さんは個人のストーリーとしてお話してくださったんですが、それがそのまま、今の日本の課題を解決する活動になっている。現代日本が抱える問題に対して大きく働きかけようとされている。本当に素晴らしいことだと思って聞いていました。身近にこんな方がいらっしゃるんですね、本当にうれしい気持ちです。

木村:いたらない自分のことを棚に上げてねえ、もう、ほんとに。いろいろ言いました。私のことを知っている方、プッと笑ってくれる人は、笑っていただけたらいいんです、はい。

の~らの精神は、当初から、ゆるゆるの合い言葉『ダイジョーブ ♪ ぼちぼちいこか』に凝縮して表現してきました。うんうん、そうやんなあ、余裕はないよなあ、ほんまに余裕はない、そやからといって、自分たちで自分の首しめんのはやめようや、ぼちぼち。ほどほどに。それでみんなが住みやすい地域をつくったらええやんか、って。

実は、最近のの~らを見ていると、この合い言葉を『人の振り見て我が振り直せ』に変えたろうかと思ったり(笑)。人に指摘されてもなかなか変われないけど、自分と同じような人の様子を見て、やばいと思って自分を改める。そんな光景が日々繰り広げられたりしています。面白いですよ~(笑)。

中田:その「ぼちぼち」できるところから、本当に少しずつ自分たちでやってこられたんですよねえ、すごいです。冬はすることないからもちつきでもしようか、なんて、最高に幸せな時間ですよねえ。

さて、木村さんに質問されたい方、いらっしゃいますか?

参加者:私は木村さんの事は 10 年前から知っていて、おつきあいさせていただいている者ですが、今日は改めてお話を伺って尊敬の念を深くしました。なんと大きな包容力のある考え方。いやあ、感動しています。

今日の木村さんのお話の中には、一度も「管理」という言葉が出てこなかった。の~らを運営していく上で、「管理」ということも必要だと思うのですが、一切その言葉が出てこなかった。そのことに私は感嘆しています。私は仕事の中でずっと「管理」してきました。人事管理、人の管理ばかりしてきた。個人的にも、今日のお話を聞いて、思うところが本当にたくさんありました。ありがとうございました。

木村:いえいえ。意識して使わないというより、まあ、あれですね、私は「管理」ができないんですね。ええかげんなもので(笑)。

中田:木村さん、先ほどのお話の中で、中流意識を持っている層が大きく減少し、貧困層が急激に増えつつある、格差(経済的なことだけでなく)がどんどん大きくなりつつあるとの見通しを示していただきました。確かにそうだと思います。

私の知っている弁護士は、自分のミッションを「貧困の連鎖を絶つ」ことだと言います。貧困は連鎖していく。今の若い夫婦の中には子どもを育てられない親も多くいます。そんな親に育てられた子どもたちは、やっぱり子どもを育てられない親になってしまう。虐待などの悲惨なニュースを耳にすると大変つらい気持ちになります。

木村:はい。ただ、虐待する親を責めるのは簡単なことなんですよね。虐待する親も追い詰められている、社会の中で。非正規雇用で生活が不安定だったり。たとえば、職場で厳しい言葉をぶつけられて鬱積が溜ったりすると、その感情を家に帰ってきてから、子どもにぶつけてしまうと思うのです。自分より弱い者に向かってしかそうできないんですね。誰か、1 人でもいいから、誰か優しい言葉をかけてあげる人がいたら、もう少しなんとかなるのでは、と思うんですね。

いま、の~らには 50 代・60 代の方も多く来られます。この先ひとり暮らしで心配だ、家がない、ずっと働いてきたけれど改めて病院で調べてみたら知的障害があった、歳とってから仕事を辞めたら(あるいは解雇されたら)次に雇ってもらえるところがない。確かに書いてる字を見たらずいぶんあやしいんですよね。そんな人が結構多い。

彼ら 50 代・60 代は、一緒にいる若者たちに働き方を見せてくれる、ありがたい存在でもあります。老若男女いろんな方が来られますが、そのみんなが互いに教え合うところを持っている、いいところがあるんですよね。どんな人にも役割がある。これって、本当にすごいことだと私は思っています。

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