セッション
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人と人、人とモノを繋げる 甲斐 みのり 氏(文筆家)
3. お菓子の背景にある物語
カステラで有名な長崎堂の「クリスタルボンボン」のことを次にお話しします。とてもレトロな可愛らしいパッケージに、ロマンチックな砂糖菓子が入っているんですが、ふたを開けた時にまず目に入るのが、「シャーロットは 見ている ひかりのように 水のように スノードロップ」という詩が書かれた紙片なのです。詩のかけらが入っているんです。きゃあ、なにこれ! 私は一気に惹かれました。もうドキドキしましたね。 そして、どなたがこの詩を書いたのだろうかと興味を持ちました。興味を持ったらいてもたってもいられません。ネットで調べても何も出てこない。私が興味を惹かれるものは、ネット検索にひっかからないものが多いのです。それで、長崎堂の方に連絡をさしあげて、どなたが書かれた詩なのか伺いました。そこで、この詩は、冬野虹さんという方によるものであることが分かりました。そのことを私がある媒体に書いたら、早速反応がありました。冬野虹さんの旦那さまからでした。虹さんがすでに天国へ旅立たれていましたが、旦那さまが「実は私もそのお菓子を食べたことがなかったので取り寄せてみます」と、私が手がける阪神百貨店のバレンタインコーナーから取り寄せてくださったそうです。そのお話を聞いて、私はさらにこのお菓子が好きになったのです。お菓子の背景にある物語、それは一つひとつ違っていて、どれも魅力的です。 このこけしのような形をした可愛らしい砂糖菓子は、金沢の越野さんの「金花糖」です。この模様は、ご家族が手書きされています。一つひとつ丁寧にずっと変わらない方法でつくられている。その家族の物語に私は惹かれました。 名古屋のいもけんぴ「花火」は、私が全国で最も美味しいと思ういもけんぴのトップクラスに入っています。覚王山吉芋というお店のものです。 実は、今回、豊岡でお茶会を企画するにあたって、ぜひ持ってきたい!と思っていたお菓子がありました。「豊岡の里」という名のお菓子です。虎屋さんにそんな名前のピンク色のお菓子があるんですね。ですが、豊岡の里を持ってくることはかないませんでした。豊岡の里は、その日作った分をその日のうちに食べてもらうお菓子だからです。東京の職人さんがつくられたものを私が新幹線で運んで・・とも考えましたが、それはなかなか難しくて。 ですが、私は全然あきらめていません。今回は夢かないませんでしたが、ずっと願い続けていくつもりです。ずっと言い続けていれば、虎屋の職人さんが豊岡に来てくださって「豊岡の里」をつくってくださるかもしれない。お菓子の聖地である豊岡で、その日つくりたての虎屋の「豊岡の里」をいただくお茶会を開催したい。この夢が実現するまで、私は願い続け言い続けます。皆さんも一緒に願っていただきたいですし、実現の際はぜひ一緒に楽しみたいと思います。 → 次のページ「4. お菓子を通して知る「美しき日本」」 |