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パスワードを忘れた方
セッション
人と人、人とモノを繋げる  甲斐 みのり 氏(文筆家)
1.私にとってのお菓子
2.私が愛する可愛いお菓子
3.お菓子の背景にある物語
4.お菓子を通して知る「美しき日本」
5.現代らしいお菓子の楽しみ方
4.  お菓子を通して知る「美しき日本」

虎屋の話題が出ましたので、もう少し虎屋のことをお話ししようと思います。私はお菓子を求めて全国を旅していますので、お菓子だけでなくその地方のいろんなものにも出会います。あるとき、東北で私はこけしに出会いました。そしてこけしに恋したんですね。それで、虎屋さんと一緒に「こけしに出会う」企画をすることになりました。

※ 参考:虎屋東京ミッドタウン店での展示に際し、甲斐さんが寄せた文章
「あるとき、お菓子を知るため旅した東北で出会ったこけし。もっとも簡素な形をもって人の姿を表し、心の内までも映し出したような趣と佇まいに、お菓子へ抱くのと違わぬ人なつこさを覚えた。どちらも生きるのに、なくてはならないものではない。しかし少しでもかじれば、たちまち心を奪われる。道中、こけしとお菓子を交互に見つめながら、なんとも甘美な時を過ごした。」

これは「とらやこけし」です。虎屋に代々伝わってきた「お菓子の見本帖」から意匠をひき、11人の工人が製作したとらやオリジナルのこけしです。こけしにはそれぞれ違う図案がデザインされています。
こちらは、「からからせんべい」です。山形県の宇佐美煎餅店さんのおせんべいを割ると、中からミニこけしが出てくるというしかけになっています。私はこのパッケージとこけしをプロデュースさせていただきました。
「こけし」と聞くと、皆さんなんとなく古臭い昔のものという気がされるかもしれません。でも、私はそのように感じなかった。お菓子に対して感じる愛情と同じものを感じたんですね。お菓子を通して、日本各地にある伝統の工芸品を多くの方に知ってもらい、好きになってもらうこともできると思うのです。

全国のお菓子をめぐり、そのお菓子の周辺にある様々なものを調べていると、お菓子を知ることはその土地を知ることにつながっていると思えてきます。お菓子を通して、私は日本を再認識している。可愛らしいお菓子に会うたびに、私は日本を好きになるのです。ああ、日本はなんて美しい国なんだろう、私の知らない素敵なお菓子がまだまだどれだけこの国にあることだろう、もっともっと知らないまちを旅してたくさんのお菓子に出会いたい!という気持ちが止まらなくなります。私は、お菓子に日本の美しさを、その土地土地に根差した魅力を教えてもらっているんですね。私の人生はお菓子によって育てられていると言えます。お菓子に人生を教えてもらっているんです。

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