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日独外交通訳の現場から  ベアーテ・フォン・デア・オステン 氏
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ベアーテ)皆さん、こんばんは。今日は特に外交通訳というテーマで、「通訳をする上で重要なこと」「通訳になるために何が必要か」ということをお話したいと思います。

東京のドイツ大使館でドイツ人として通訳の仕事をしているのは私1人だけ。あとは日本人です。仕事の9割はドイツ語から日本語への訳で、日本の方にドイツのことを伝える内容です。通訳というのは、外国語から母国語に通訳するのが普通ですが、外交のときは逆になります。私がドイツ語から日本語に通訳し、日本側も、日本人の通訳を用意します。これは、話し手(インプット)の言っている意味や、考えていることが全部わかるからです。アウトプットは少し変でもかまわない。内容に忠実であることが重要なのです。また、ドイツ人にとって日本が大事な国である、だから日本語を勉強していますという意味も込められています。

2007年、ハイリゲンダムで開かれたG8サミットのとき、南ドイツ新聞が組んでいた特集の中に「最も重要な人物は政治家ではなく通訳である」と書かれていました。通訳の本質は、2人または2つのグループの間にコミュニケーションを成立させ、十分に細かいところまで理解を深めることです。通訳がいなければ、コミュニケーションが成り立たず、コミュニケーションが成り立たないために問題が起きることも少なくありません。日本とドイツでは文化が違いますが、両方の文化をわかっている人がいて初めてこのギャップを緩和し、理解を深めることができます。究極的にはこの世の平和に貢献できる意義のある仕事で、私は心から通訳になってよかったと思っています。

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