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日独外交通訳の現場から  ベアーテ・フォン・デア・オステン 氏
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中田)すばらしいお話でした。メルケル首相の通訳は何回もされているのですか?どんな性格の方ですか?

ベアーテ)はい。ドイツ外務省で日本語専門は私一人で、ベルリン本省にはいません。インターネットがあるので、必要があれば、メールで東京からベルリンに訳を送ることができるからです。日本から位の高い人がドイツに行くときも、私が一緒に行くこともあります。

メルケル首相は、目がステキな方です。青くて透明な、絶対ウソをつかない目をしています。かわいい感じですし、たぶん世界一有力な女性の一人だと思いますが、謙虚です。あまりおしゃべりをされない静かな方です。

中田)ドイツは政権が長く続きますが、権力闘争はないのでしょうか。

ベアーテ)成果を挙げていたら、うまくいっているのでもう1回やってもいいのではと思うのでしょうか。あまり長すぎると、変化や刺激がないので別の党に入れようかという感じですね。メルケル首相はしばらく来日していませんが、これは、儀礼上、任務に就いてからの期間の若い人が長い人のところへ行くことになっているので、日本の首相がドイツに行って、今度はドイツから日本に行くことを計画しているうちに首相が変わったりしているためです。

参加者)日本の中でもいろいろな場所に行っておられると思いますが、印象に残った場所はありますか?

ベアーテ)沖縄サミットですね。当時は警備もそれほど厳しくなく、アットホームな雰囲気のサミットでした。同時多発テロ以降、警備が厳しくなって雰囲気が変わりました。それと、震災後、連邦大統領と訪れた福島では、仮設住宅の人々の頑張りに感動しました。

参加者)私は玄武洞でガイドをしているのですが、お話するときに、相手の目を見て話すか通訳の目を見て話すべきか迷います。また話の長さはどのくらいで切るのが適切でしょうか。

ベアーテ)私のポリシーでは、相手側を見てほしいと思います。日本語のわからないお客さまの場合、話もわからないしこちらを見てもくれないとなると、排除されているように感じて面白くありません。通訳は、主人公ではなく補助的な役割なので、見なくても大丈夫です。切り方については、プロの通訳であればメモを取る訓練を受けているので長さは問題ありません。ただ、聞いている人が退屈なので、ある程度のまとまりで切った方がよいと思います。また、一文一文というのも訳しづらいので、ある程度のまとまりがあった方がいいですね。

参加者)ことわざはどんな風に伝えますか?一番好きな日本語は?

ベアーテ)ぴったりの意味のことわざがあれば、それを使います。特になければ、ことわざを使わずに意味を伝えます。また、よく知られている文学や映画のタイトルは、定訳を使わないと教養のなさがわかってしまいますね。たとえば、『嘆きの天使』という映画の原題は『Der Blaue Engel』といって「青い天使」という意味なのですが、日本語では『嘆きの天使』でないと伝わりません。

好きな日本語は…、そうですね。昔、ドイツで知り合った日本の男性とお付き合いしていたころ、お互いドイツ語で話をするといつも喧嘩になっていました。ドイツ人は白黒つけたがる固い民族なので、ドイツ語を話すとそうなっちゃうんですね。ところが、同じ人とフランスに行ってフランス語で話をすると柔らかな雰囲気になるんです。そして、それから何年も経ってから、その人と日本で再会してお互い日本語で話したとき、本当に穏やかな気持ちで話ができて、ああ日本語っていいなぁと思いましたね。

ビギー)それでは、この穏やかな雰囲気のまま第一部を閉めたいと思います。ありがとうございました。

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