セッション
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炎のチャレンジャー 美藤 定 氏
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中田)さきほどのJBスペックについてお聞きしましょう。基準は感覚でやっているんですか? 美藤)ホンダR&Dで働いていたころ、世界中に良い技術があるが、日本はずっと遅れていて、最高のものがなかった。大量生産の安くて良いものはあるのに。 中田)つまり、突き抜けたものがなかったということですね。BITO R&Dはそれをやろうと。 美藤)大会社でなくても、個人の小さな会社でも出来る可能性がある。多少のお金とアイデアはある。どこの誰がどういうものをほしいのかは、なかなかわからない。俺にもできるんじゃないかと思った。 中田)持ってきていただいた、もう1つのは?
中田)経営者からすると、ゾクゾクワクワクするお話ですね。ピンを狙う、他人のやらないこと、最高級、他の追随を許さない、そしてJBスペック。 美藤)私、問題があって(笑)、みんなに合わせられないんです。 中田)あ、次のお話にいきますか(笑)。美藤さんは、「原点回帰」とよくおっしゃっていますが、どういうことでしょう。 美藤)オートバイは今、危ない乗り物になっています。最高時速350キロとか。制限時速100キロの国で、本当にそんな乗り物が必要でしょうか。でも、競争なので、どんどん売りに出される。最高のものと思って買っても、実際、危ないものです。 私の原点は自転車です。走るよりも速い。坂の上から転がるときのスピードが面白い。ヨットやスキーもそうですが、スピードと、転ばないようにバランスを取りながら体をコントロールするのが面白いスポーツですよね。体力を超えたものを、道具を使ってするのが面白い。原始的な思いから道具を作って、できた当時は感動がありました。
社員は売れるものを作らないといけない。価値がわからない人がモノを作る時代です。本来、人を幸福にするために作っていたのが、売れさえすればいいという。それはちょっと違うんじゃないかと、取材の都度、話をしています。本来、人間のための技術、アイデア、産業だったはずなのに、商売している人のための産業になっていないか。原点回帰して、本来何のためにそれをやっているのかという提案をしています。 中田)企業の使命の話ですね。モノづくりの哲学のない人が作っていると。 美藤)ないですね。わかっている人が教えればいいが、昇進していくとやらなくなるでしょ。年をとった人が最後まで現場に居残るということがない。経験や知恵が生かされず、発展しない構造になってしまっています。わからない人は、数字を信じるんです。数しか価値の判断基準がないんです。 → 次のページ
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