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セッション
何が私を駆り立てるのか?  中貝 宗治 氏(豊岡市長)
1.主催者あいさつ
2.わたしのまちの市長さん(子どもの視点から)
3.「豊岡」を語るときの視点、そこにある 2 つの大きな「感動」
4.「中貝流」はいかにして育まれたか(1)
5.「中貝流」はいかにして育まれたか(2)
6.感動が感動を呼ぶ。心を動かすのが「中貝流」(1)
7.感動が感動を呼ぶ。心を動かすのが「中貝流」(2)
8.感動をベースにした「中貝流」哲学
3.  「豊岡」を語るときの視点、そこにある 2 つの大きな「感動」

せまり役:それではここからは、「せまり役」の私が市長に質問しながら、進めていきます。
今回の当選で 4 期目。市長人生で最も感動したことは?

コウノトリが空を羽ばたいた瞬間ですね(即答)。2005 年のことです。コウノトリの保護活動を始めたのが 1955 年、ヒナがかえったのが 1991 年、そしていよいよコウノトリを野生に返すときがきた。
あのときのことを、「大きな声で『やったあーーーー!』と言う声が聞こえた」と地元の方が言います。それは私なのです。それくらい、僕は大声を出していた。「やったあーーー!」と万歳をして喜んだんです。本当にうれしかった。空を飛んでくれなかったらどうしよう、内心ヒヤヒヤしていました。けれど堂々と優雅に空を舞ってくれた。あのとき、コウノトリを見上げたときのことは、何よりも大きな一番の感動です。

そして、感動という言葉とは少し違うかもしれませんが、ぞっとしたことがあります。コウノトリが「プラス」の感動だとすれば、「マイナス」の感動です。それは、円山川の堤防が決壊したときです。2004 年の秋です。
あのとき、私は全く言葉を失いました。真夜中、真っ暗なまちに、濁流が押し寄せてくる。濁流が市民を襲う。轟々と濁流が家や車を押し流していく。その恐ろしいイメージが今も焼き付いています。

豊岡を語る時、私はこの強烈な表裏の「プラス」と「マイナス」の感動を、必ずセットにして皆さんにお伝えします。コウノトリがテーマの講演でも、防災がテーマの講演でも、私は必ずこの 2 つについて触れます。この二面性を抱えているのが豊岡というまちだからです。

せまり役:堤防の決壊は、私の人生においても大きな意味があります。実は皆さんが今いらっしゃるこの部屋も、どっぷり水に浸かりました。こちらの土壁に線が見えますか。そこまで水に浸かってしまう、後に床に溶け落ちた土を再度塗り直したものです。グランドピアノも何もかもだめになりました。別の場所にある中田工芸の工場も、3m 浸かり 3 か月間操業をストップせざるをえない状態でした。

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