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セッション
干物女のまんが道  ひうら さとる 氏(漫画家)
1.主催者あいさつ
2.ひうらさとる、プロフィール
3.漫画家「ひうらさとる」になるまで ①小学生~就活期
4.漫画家「ひうらさとる」になるまで ②内定~就活決定
5.漫画のつくりかた ~アナログからデジタルへ~
6.時代と共に変わり続ける、漫画家ひうらさとる
7.お山(豊岡市神鍋)暮らしをベースにした最近の作品づくり
8.最後はびしっと?まとめます!!
5.  漫画のつくりかた ~アナログからデジタルへ~

中:それでは、ちょっと具体的にお仕事のことをお聞きしたいと思います。漫画はどのようにしてできるんでしょうか。

ひ:えと、まず、担当さん(編集者さん)と打ち合わせするところから始まります。ここで、全体のストーリーについてあれこれ意見を出し合って決めるんです。最近の若い子たちの恋愛が変わってきてるよね、とかいろいろ話します。ラリー形式でお互いに意見を打ち合って一緒に考えるんです。

どんな漫画にするか決まったら、ネームです。映画で言えば絵コンテに当たるものです。32枚とか28枚の決まったページ数におさまるように、書き割りするわけですね。ここでだいたいのセリフも書き込んでいきます。人物は必ずすべて私がかきます。背景をアシスタントさんにお願いします。トレースして写して書き込んだり、スクリーントーン(模様が印刷してあるシールのようなもの)を貼ったりしてもらいます。

最も量産していた時代で月に160ページ書いてました。そのときのアシスタントさんは7~8人。締切が迫ってくると、アシスタントさんたちも泊まり込みで合宿状態です。仮眠できる場所やお布団まで事務所に確保してましたね。明日が入稿だという夜中、もうお店はどこも閉まっている時間に、「先生、スクリーントーンがきれちゃってありません」とアシスタントさんに言われたりしてね。「切れ端みたいなシートでいいから、かき集めてなんとかお願い!」なんて言ったりして。

そして無事に入稿すると、食べ物をちょっと買い出しにでかけたり、焼き肉を食べて軽く打ち上げしたりして、さあ、明日からまたがんばるか!って、部屋にこもって漫画を描くという日々でしたね。

以上が、アナログ時代の漫画の描き方です。今は私はデジタルで仕事をしています。だから、東京を離れて、神鍋高原(豊岡市)の山の中で漫画家を続けることができるんです。かつては、膨大な資料を本の形で所有するしかありませんでしたので、ものすごくスペースが必要でしたが、今は、本をすべてスキャンして取り込んでますから、必要な時に必要なものをデータで取り出せる。背景になりそうな風景や花など、パソコンに入れているデータとしては、圧倒的に写真が多いですね。

デジタルになっても、漫画の作り方の基本は変わりません。まずは担当さんと打ち合わせ。アイデア出しは、メールや電話でやります。そしてアシスタントさんとはスカイプでやり取りします。アシスタントさんは現在たった一人、千葉在住です。

なぜアシスタントさんが一人で大丈夫なのか、これは、私が現在「コミックスタジオ」という漫画制作ソフトを使っているからなんです。パソコン上の画面に専用のペンで書き込むわけです。アナログで書いた漫画と、このソフトを使ってパソコン上で書いた漫画と、どっちがどうか、分からないくらいです。フォトショップという写真加工ソフトをイメージしていただいたら分かりやすいかと思いますが、レイヤーで重ねることができるからとても便利なのです。スクリーントーンも無限にデータとしてあるんですよね。真夜中にシールがなくてシールの切れ端をかき集めて必死で切り貼りしなくていいですしね。

私は朝型で仕事していますから、早朝から夕方までに書いた原稿を、18時くらいにアシスタントさんにデータで送信します。そうすると、アシスタントさんはいわゆる夜型の仕事タイプなので、私が送ったデータに夜中から朝方までに背景を入れてくれるわけです。

私の一日のことをもう少しお話しすると、朝3時か4時には起きます。そして誰にも邪魔されない時間に漫画を描く。7時頃には子供が「ママ~」って起きてきます。そしてここで朝ごはん。主人が作ってくれます。あまちゃん(NHKの連続テレビ小説)を見て、お昼ご飯まで仕事に集中、そしてお昼になるとまたあまちゃんを見て、夕方6時までまた仕事。6時以降は、家族と一緒に過ごす時間として完全に仕事から離れます。そして、9時ごろには子供と一緒に寝ちゃうという生活ですね。

もちろん、年に数回はアシスタントさんや担当さんと、直接顔を合わせます。が、デジタルで漫画を描くことで、私の暮らし方は大きく変わりました。

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