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本の未来について  幅 允孝 氏
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中田)TSUTAYA TOKYO ROPPONGIに行かれた方、いらっしゃいますか、スタバがあって、コーヒーを片手に、カフェのようにくつろいで本を見ることができる、私も大好きな場所です。本当に素敵なんですよね。幅さんが手がけられている場所は、東京で最もおしゃれでホットなスポットといいますか、非常に話題性のある最先端の場所ばかり。そのいろんな事例は、この後でもご紹介いただけると思いますが、大活躍なさっている幅さんに、こんな風に但馬コネクションにお越しいただいてお話していただけるなんて、贅沢なことです。みなさんが思っている以上に、幅さんは本当にスゴイ人なんですからね。アーティストであり、優れたマーケッターであり、プロデューサーであり...。

幅)わ、ちょっと...、そんなのやめてくださいよー(笑)。やってることはひたすら地味な作業で、本を運んで並べて、ということなんですから。せいぜい、アイデアマンくらいですよ。というか、僕は、交通整理をする人です。アーティストはあくまでも本を書いた人。僕は本を書く人をすごいと思っていますし、心からリスペクトしていますから。

なんでもネットで検索する世の中になっちゃったから、体を運んで行く本屋には、知らない本があって、本屋で時間をすごしてもらって、いい意味で「つまずいて」もらいたい。未知なる本、知らない本を届けるのが僕の使命です。

本屋をやめて新しく仕事をはじめた頃は、なんでお前が本を選ぶことに対してオレが金を払うんだよ、ってくらいの意識ですからね、世間の商習慣は。ネゴシエーションというより、もはや説得でしたね。世の中を説得させなくちゃならない。誰かの胸に僕の好みの本を押しつけても、それはただのおせっかいですから、そういうことはしない。とにかくインタビューをします。相手のお話を丁寧に聞いて、相手の気持ちの中にあるものを、僕の中のものとつなげていく。そうやって、本の整理をして、人と本の出会いをつくるんです。

人と本の出会いをつくる、と言いましたけれど、いま日本で年間に約8万タイトルの本が出版されているんですよ、つまり一日に200タイトルです。ものすごく早いタームでどんどん本をまわしていかないと、小さな出版社は立ちいかないような仕組みができあがってしまっていて(この弊害について話し出すと長くなっちゃうんだけれど)、とにかく、どんどん回転を良くして売っていく。本が「貨幣化」し、自転車操業で回している中小出版社も多いんですよね。たくさん本が出すぎていて、どれを手に取っていいのか分からない。選べない。

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