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セッション
いのちのヴァイオリン  中澤 宗幸 氏
1.主催者あいさつ
2.但馬出身の中澤さん
3.「ヴァイオリン」という楽器
4.「ストラディヴァリウス」について
5.ヴァイオリンとの出会い(生きることと音楽 ①)
6.ヴァイオリンは特別な楽器ではない
7.ヴァイオリン・ドクターへの道
8.被災木でヴァイオリンをつくる(生きることと音楽 ②)
9.ふるさと但馬への思い
4.  「ストラディヴァリウス」について

それでは次に、ストラディヴァリウスとは何ですか?

はい。アントニオ・ストラディヴァリ。イタリアが生んだ天才です。彼は93歳まで生きました。そして、その間に、なんと3000挺の楽器をつくった。ヴァイオリンだけでなく、マンドリン、ギター、コントラバス、ヴィオラ、チェロ・・・。いくら93歳まで生きたからと言ってもこれだけたくさんつくるのは難しい。きっと、優秀なお弟子さん達がいて、「これはいい」と認めたものには自分のラベルを貼ったのだろうと思います。
彼のつくった楽器は、初期・中期・後期の3つに分けてその特徴を語ることができます。初期は師匠のアマティの影響を存分に受けています。つまり、甘い音がします。師匠の音を経て、彼は独自の音を求めるようになる。それが中期の作品です。この時期はストラディヴァリウスの「黄金期」であると言われています。大きな音、力強い音、しかも甘い。
2011年でしたか、オークションで落札され話題になりましたね、「レディ・ブラント(1721年製)」。現存するストラディヴァリウスの最高値である12億円の値がつきました。落札価格にさらに十数%のオークション手数料がかかりますから、とんでもない額です。

中澤さんの奥さま・中澤きみ子さんはヴァイオリニストでらっしゃいます。ストラディヴァリウスを弾いておられますよね。

ストラディヴァリウスは、とても私たちの買えるものではありません。妻が現在弾いているのは、世界の5本の指に入る素晴らしい名器ですが、貸与されたものです。カレー専門店の「CoCo壱番屋」ってあるでしょう、そのカレー屋さんから大切にお預かりしているものなのです。(会場、どよめき)
※「CoCo壱番屋」創業者、宗次徳二氏は、知る人ぞ知る「楽器オーナー」。演奏家個人では購入の難しい高価な楽器を購入し、貸与することで、日本の音楽文化を経済面で支えている。中澤きみ子さんもそのお一人。

へえ、それは知りませんでした。今度カレーを食べに行かなくちゃいけませんね。ところで、ストラディヴァリウスの音は、どうスゴイのでしょうか。

いいことを尋ねてくださいました。ストラディヴァリウスのことを語るのに、もう一人ご紹介しなくちゃなりません。アントニア・ガルネリです。ガルネリもアマティの弟子でした。
先ほども言いましたが、ストラディヴァリウスは93歳まで生きて、3000挺の楽器をつくった。20歳も歳下の若い奥さんをもらって、合計で11人もの子どもを持った。すごいんですよ。奥さまにも音楽にもすごく熱心、お金持ちの未亡人と結婚しますしね、貴族達の注文を積極的に受けて、どんどんつくった。

一方、ガルネリは46歳で死んでしまう。そしてその短い人生は波瀾万丈でした。大酒飲みで、ケンカはする。しかし、この起伏の激しい人の生み出すヴァイオリンの音がね、どこか憂いを帯びた音なんです。仏教的な無常観、どんな人も包み込んでしまうような音、全ての哀しみや苦しみを包み込んでしまうような音。だから東洋人はガルネリに惹かれる。実は私もそうです。私たちの年代はガルネリが好きなんですね。けれど、ひょっとしたら、今の若い人たちはガルネリじゃなくて、ストラディヴァリウスに惹かれるかもしれませんね。
今度、豊岡に来るとき(2月に中澤きみ子さんのヴァイオリン演奏会が企画されている)は、ストラディヴァリウスを持ってくるようにしましょう。20億円以上もするんですよ。(会場、どよめき) 豊岡でこんなことになるなんてね。但馬の人はもっとおとなしくて、ドンと前に出てくるような人がいるとは思っていなかったんですけれど、中田さんとの出会いがきっかけですね。

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