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セッション
いのちのヴァイオリン  中澤 宗幸 氏
1.主催者あいさつ
2.但馬出身の中澤さん
3.「ヴァイオリン」という楽器
4.「ストラディヴァリウス」について
5.ヴァイオリンとの出会い(生きることと音楽 ①)
6.ヴァイオリンは特別な楽器ではない
7.ヴァイオリン・ドクターへの道
8.被災木でヴァイオリンをつくる(生きることと音楽 ②)
9.ふるさと但馬への思い
6.  ヴァイオリンは特別な楽器ではない

お父様の言葉、素晴らしいですね。それに、見よう見まねでヴァイオリンをつくってしまわれるなんて。

あのね、簡単なんですよ、ヴァイオリンは誰にだってつくれます。
ちょっと脱線していいですか? (立ち上がってものを見せ始める中澤さん)ヴァイオリンはね、誰でもつくれる楽器なんです。誰にもつくれるけれど、絶対に同じものはできない。作り手の性格が見事に現れます。その人の世界の音が出来上がる。不思議ですよね。

ヴァイオリンはこういう木材からつくりますね。これは陸前高田から拾ってきたものです。ヴァイオリンに使う木材は決まっています。表板などは松の木、渦巻き状の柄の部分は楓、その二種類です。
それで、こういうカンナで削ります。このカンナは私が樫の木でつくったものです。こんな小さいのもあります、豆カンナと言います。
僕は今、頼まれてヴァイオリン作りを教えています。ものづくりの楽しさを伝えるためにね。教室には小学校4年生から83歳の方がいらっしゃいます。女性でもこうやって削っていけばできる。手順さえ踏めば、難しいことなんてないんです。

これは外枠です。こんなに薄いんですね。こんなに薄い板を曲げなくちゃいけないんですが、ちゃんとやればほんとに難しくないんですよ。こうやってね、ほら、簡単でしょ(笑顔)。
こんな形(渦巻き状のヴァイオリンの柄の部分)にどうやって木を切りぬくのか、難しそうだと思われるかもしれませんが、最初からこの形を見ちゃうからそう思うんです。まず4面に削るんです。それから8面さらに38面…、そうやって考えて削っていけば、ほら、ね、簡単でしょう? できるんですねえ。ハンガー(中田工芸)の方が難しいかもしれません(笑い)。

道具の使い方については西洋と日本では少し異なります。例えばこのカンナ、日本では引くときに削ります。外国は押して削る。力強く大きく削る時は押す方がいいですし、細かな作業をするときには引く方がいい。日本も外国もどちらも合理的です。が、これだけは自信をもって言いますが、繊細さについては、絶対に圧倒的に日本が優れています。カンナ一つ見ても違います。外国のカンナは鉄でできている、日本のカンナは樫の木で作ります。木製ですから消耗します、けれど、対象物にぴたっと吸いつくのですね。吸いつきがとてもいいのです。僕はこのカンナの刃を新潟・三条の刀鍛冶にお願いして特別につくっていただいています。

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