セッション
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新しい広場をつくる 平田 オリザ 氏
2. 宮沢賢治の農民芸術論から話をはじめよう
~誰もが芸術家。どんな小さな村も世界の中心~ みなさん、はじめまして。一昨年から何度か呼んでいただいて豊岡に通っております、平田です。豊岡には本当に素晴らしい場所がたくさんあるなあと思っています。長い準備期間を経て、やっと上演にたどり着いた「変身」。いよいよ、もうすぐ皆さまにお目にかけることができます。どうぞ見にいらしてほしいと思います。 さて、中田さんからのリクエストを受けて、今日は「新しい広場をつくる」ということについてお話したいと思います。 井上ひさしさんが書いた戯曲に「イーハトーボの劇列車」というのがあります。井上さんが敬愛する宮沢賢治の生涯を描いた劇です。宮沢賢治は、多くの童話のほかに、「農民芸術論」というような優れた論考も残しています。なぜ農民が芸術を楽しむことが必要なのかを、農民に対して説明している本です。今日のお話のはじめに、その一節をちょっと早口ですが、読みあげたいと思います。 (引用)職業芸術家は一度滅びねばならぬ。誰人もみな芸術家たる感受をなせ。個性の優れる方面に於いて各々やむなき表現をなせ。然もめいめいそのときどきの芸術家である。 なぜ、賢治は、農民一人ひとりが芸術家のように生きなくてはならないと説いたのか。どんな村もそれぞれが世界の中心であるはずだと語るのか。芸術とはなにか。そのあたりのことから、お話していこうと思います。 → 次のページ「3. 社会における芸術の役割 ①」
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