セッション
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新しい広場をつくる 平田 オリザ 氏
8. スラム化する日本社会 ③
人口が減るのは「文化」がないからだ そもそも、商店街というのはおもしろい場所であるはずなんです。そうでしょう?それを経済の論理だけで対抗しようとするから、つまらない商店街になってしまうんです。経済にはかないませんよ。NPOで商店街に本屋さんをつくろう!って、面白がってやるのがいいんです。商店街に行く「理由」を一つつくればいいんです。ポイントは「小ささ」です。規模を大きくしてはダメ。小さいものをこまめに集めて、重ねていくこと、です。 豊岡では民間の方が、映画館を新しい集いの場として復活させようとしているらしいですね。本当に素晴らしいプロジェクトだと思います。ぜひおもしろい場にしてほしい。期待しています。 「文化」のないところで、人口減少がとまるわけがない。だって文化のないところに、「恋」がおこるわけがないんだから。好きな人と、一体どこにデートに行くのですか。「映画館は私の初デートの思い出の場所です」という人は、一定以上の年齢の多くの方の日本人に共通の甘い記憶でしょ。 仕事がないから地方から人が減っていくのではないんです。おもしろくないから減るんです。文化がないから減るんです。恋が起こらないから減るんです。恋の起こらないところに人は来ませんよ。それなのに、行政が「活性化」なんてやると、実につまらないことしかしない。婚活パーティなんてねえ、バカなことやってるでしょ。あんなパーティ、全くしなくていいと思いますね。 地方には若い人の居場所が本当にない、これは非常に深刻なことだと思っています。あっても、カラオケBOXとかゲームセンターとかくらいでしょ。そこは壁で仕切られた閉鎖空間、閉塞感の漂う無機質な場所です。中で何が行なわれているのか、外からは全く見えない。こんな場所で学年を越えた交流が生じるわけがない。 現在、日本の地方のひきこもり人口は相当のものです。成功の道筋は一つで、いったんそこから外れるともうどこにも戻れない、居場所がない。地方ほど、その定石から外れた者を許さない。「まわりの目」が監視している。まわりの目のために身動きがとれない。生き方・楽しみ方の多様性すら、地方の若者たちからは奪われて失われているのです。 → 次のページ「9. 都市-地方間の歴然たる文化格差」
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