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セッション
新しい広場をつくる  平田 オリザ 氏
1.主催者あいさつ
2.宮沢賢治の農民芸術論から話をはじめよう
3.社会における芸術の役割 ①
4.社会における芸術の役割 ②
5.社会における芸術の役割 ③
6.スラム化する日本社会 ①
7.スラム化する日本社会 ②
8.スラム化する日本社会 ③
9.都市-地方間の歴然たる文化格差
10.新しい「広場」をつくる ①
11.新しい「広場」をつくる ②
12.宮沢賢治の農民芸術論で話を終えよう
5.  社会における芸術の役割 ③

経済的に影響するもの(福祉・医療・観光・教育など)

芸術が社会に果たす役割の三つ目は、間接的に「経済」に影響を及ぼしていくものが挙げられます。こんな例があります。北海道浦河町では、65際以上の方を対象にしたミュージカルを創った。当日までに何度も練習してね。そうすると、その稽古期間中は、町立病院のロビーが閑散とした。日常的に通院していた65際以上のみなさんが喜々として稽古に通った、つまり、みなさん芝居ができるくらいに元気だった、通院などしなくてよかった、元気なご老人ばっかりだったんですよ(笑)。毎日、病院で「やあ、どうもどうも、○○さん、こんにちは」なんてあいさつしてなくてよかったわけです。

そうすると、医療費はぐんと減った。町にとっては、ミュージカルに高齢者が集まって楽しく歌って踊ってくれることで、高齢者の自立は進みますし、医療費が大幅にカットできる。ダンスという芸術が、経済的に影響を与えることができる、という例です。

福祉・医療だけでなく、観光についてもアートの力は及びます。けれど、今見ると、ぞっとするようなハコモノが残っているまち、あるでしょ。なにか「珍しいもの」をつくれば人がやってくるだろうって、ヘンなものをいっぱい作ってしまった。そんな考えは昭和の発想です。そんなもので人は来ないし、結果としてお金も落ちません。そうやって地方につくられてきた珍奇な遺物は、全国いたるところにあります。地元の人に長年愛され、地元の人が本当に楽しんでいるものに、ちょっとだけ客観性を持った外部のプロデューサーが関わること。それだけで観光になる。それだけでいいんですよ。

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